高尿酸血症・痛風
このような主訴で来院される方は少なくありません。痛みの原因として考えられるのは、風が吹いても痛いと言われる「痛風発作」です。「痛風って、ビールをたくさん飲む人がなるんでしょ。」と思っていませんか?残念ながら違います。ビールを飲まない方でも、誰でも痛風になる可能性はあります。尿酸値が高いと言われた事のある方、お酒を減らす事ができないという方は、痛風発作を起こす可能性が非常に高いので注意してくださいね。
高尿酸血症・痛風発作とは
高尿酸血症ってなに?
尿酸は、最近の研究で「強力な抗酸化物質」であることが分かっています。体がさびないようにとても大事な役割があるのです。しかし一方で、増えすぎると様々な問題を引き起こします。尿酸は、プリン体が肝臓で分解されてできる老廃物で、腎臓から尿と一緒に排泄されます。プリン体を多く含む食べ物・飲み物を摂取しすぎたり、アルコールを摂り過ぎると尿酸値は上がり、「高尿酸血症」という状態になります。血液中の尿酸値(UA)が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。
痛風発作ってなに?
血液中から尿酸があふれると、尿酸が結晶となって関節の中に出てきます。この結晶がはがれ落ち、関節の膜に刺ささると、そこに白血球が集まってきます。白血球はこの結晶を敵とみなして攻撃し、炎症を起こす物質が発生します。これが激しく痛む痛風発作の仕組みです。
この痛みは経験しないと分からないと言われています。人によってはハンマーで殴られたような痛みが続くと言います。40~50代の体格のよい男性が痛風発作で泣きながら大暴れして救急車を呼ぶ、なんてこともあるくらいです。
原因は食べ物・飲み物だけなの?
高尿酸血症の原因には環境と遺伝がありますが、ほとんどの場合、両方の要因が重なって発症します。どちらの影響の方が大きいのか?というと、明治時代の初期には痛風患者さんはほとんどいなかった事や、双子の研究結果から、遺伝要因よりも環境要因の方が影響が大きいことが明らかになっています。環境要因とは、つまり運動習慣や生活習慣の事です。お酒は飲まず、食事も気を付け、運動もしっかりやっているのに尿酸値が高い人は、どうしても遺伝的要素の影響があります。しかし、遺伝だけで全てが決まる訳ではなく、自分では気づいていない環境要因がある場合もありますので、まずはご相談ください。
痛風の人ってどれくらいいるの?
痛風は古代中国では「贅沢病」なんて言われていました。日本でも明治時代初期には痛風患者さんはほとんどいませんでしたが、現代社会では食生活が豊かになり、一般の人でも痛風になるような環境になりました。
男性に多いですが、女性でも痛風になります。
日本では、500万人以上の人が尿酸値が高いと言われ、100万人を超える痛風患者さんがおり、年々急速に増加しています。以前は50歳代が多かったのですが、食生活の変化によって徐々に若い人が増え、現代では30歳代が発症のピークになっています。若い人でも注意が必要です。
どこが痛くなるの?
痛風発作の約7割は「足の親指の付け根」で起こります。
その他にも、
- 耳や手足など体温の低い部位
- 膝関節、アキレス腱、肘、手首などよく動かしたり負荷がかかかりやすい部位
でも起こります。
痛みはどれくらい続くの?
痛風発作を何回か繰り返している方は、皆さんよくこう言います。
「あのね先生、なんとなく起きる前に分かるんですよ。関節が重くなってきたり、つっぱってきたりするんです。」
こういうのを発作予感期とか予兆といいます。
典型的な発作では、夜中の寝ている間に痛みが出現し、朝は痛みで目が覚め、足をつくこともできない程になります。
- 痛みの始まりからピークまでは半日~1日程度
- 軽症の場合、痛みは2~3日で終わる
- 高度の関節炎では真っ赤に腫れ上がった後、7~14日で自然軽快する
発作が終わると、炎症部分が紫に変色し、皮がむける事があります。
痛風発作は何回もくり返されるの?
初めのうちは、痛風発作は1~2年に1回程度です。発作がない間は症状が全くありません。しかし、生活習慣が改善されなければ、症状はなくても尿酸値は高いままなので、発作は何度もくり返されます。2回目以降は、足首、膝、手首、手の指、耳など、足の親指以外の場所に現れることもあります。発作の間隔は少しずつ短くなり、痛む時間も長くなっていきます。数年間、痛風発作をくり返していると、手足の節々がふくれ、こぶ状に変形し、手足の曲げ伸ばしなどの日常動作に支障がでてきます。これを痛風結節といいます。
また、尿酸塩結晶が腎臓にたまってくると、痛風における重篤な慢性合併症である痛風腎となり腎臓がダメージを受けたり、心臓発作が起きやすくなります。痛風発作をすでに起こしてしまった経験のある方は、今後発作が起きるリスクを下げるためにも、一緒に学び生活習慣の改善から始めていきましょう。
あなどれないぞ、高尿酸血症のこわ~い合併症
高尿酸血症になると、痛風以外にも様々な病気を発症するリスクが高くなります。尿酸が固まって尿路結石ができやすくなります。腎臓の機能が低下して、まれですが、透析になってしまうくらい腎臓の機能が著しく低下してしまう方もいます。また、いろいろな生活習慣病を合併しやすくなります。特に内臓脂肪肥満の方は要注意です。尿酸値が上昇するとメタボリックシンドロームになる可能性が高くなり、高血圧、糖尿病、脂質異常症などを発症しやすくなります。すると、動脈硬化を悪化させて、血管が詰まったり破れたりする、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気のリスクも上がります。
どんな治療をするの?
高尿酸血症・痛風の治療には、食事療法と薬物療法があります。
①食事療法
食事の見直しにより尿酸値はかなり改善します。お薬を飲まずに正常値まで下げることができる方も多くいらっしゃいます。当院では、栄養士さんによる「お食事相談」を行っていますので、一緒にお食事改善の作戦を立てていきましょう。高尿酸血症における食事のポイントとしては、
・アルコールは適量を楽しむ
・おつまみはほどほどに
・食事は腹八分目まで
・水分をたくさんとる
・野菜・海藻を積極的に食べる
・ウォーキングなど適度な有酸素運動を習慣にする
などですが、問題点や改善方法はひとりひとり違いますので、「お食事相談」で個別に合った方法を提案させていただきます。
②薬物療法
何度も痛風発作を起こしている方や、食事療法で目標値まで尿酸値が改善しない場合は、尿酸値を下げるお薬を処方します。痛風発作が起こっている間は、炎症が落ち着くまで尿酸値を下げるお薬は飲めません。痛みが生じている間は、痛み止めのお薬で対応します。
痛風や尿路結石といった発作や合併症を予防するために、血清尿酸値の目標は6.0mg/dL以下です。年に2~3回は採血を行い、お薬の量を調整していきます。
尿酸値が高いと言われている方へのメッセージ
健康診断などで、「尿酸値が高い」と言われているけれど、症状もないし、放っておいても大丈夫でしょう、と思ってはいませんか?今は痛風発作などの辛い症状が出ていない時期ですが、この間にも関節の中では尿酸塩結晶が固まりつつあります。そのままにしておくと、痛風発作を発症する確率が大きくなり、命に関わる病気につながる可能性があります。今日から、生活習慣を見直すことが大切です。毎日を不自由なく元気に過ごせるように、一緒に考えていきましょう。