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糖尿病は「一度なったら一生治らない?」【2024年5月号】

[2024.04.16]

糖尿病は「一度なったら一生治らない?」

 
2型糖尿病で治療中の方は、こんなことを言われた経験がありませんか?「糖尿病は一度なったら一生治りません。」もしくは「お薬は一生使い続ける必要があります。」
 
正直に言いますと、これまで医師から皆さんにそういった説明をしてきたことはよくありました。しかし、私たち医療従事者は、治療経過中に血糖値が正常化し、薬が不要になる方がいらっしゃることを経験してきました。多くはないものの、手術で胃を切除して肥満が大幅に改善した方や、食事・運動療法などのご自身の努力により生活習慣の改善に成功された方によく見られます。
 
それにもかかわらず、私たち医療従事者がなぜ皆さんに「一度なったら治らない」と説明してきたのか・・・。参考になる記事がありましたので、ご紹介させていただきます。
 
 
 
『専門医が2型糖尿病は「治らない」と言っていた理由 。言い訳のようになってしまいますが、それは皆さんのためを思ってのことだったのです。治療によって薬が不要になり、血糖値が正常化しても、その後、食事・運動療法が緩んだり、年齢を重ねたりると、再び血糖値が上昇して薬が必要になることがあります。
 
それにもかかわらずわたしたち専門医が「治った」と告げてしまうと、皆さんが「治ったのだから、食事・運動療法や定期検査をしなくても大丈夫」と誤解してしまい、治療や通院を中止する可能性が出てきます。そうなると再発時の発見が遅れて合併症が進んでしまうことを恐れたからです。
 
しかし、善意からとはいえ、「一度なったら治らない」という言葉の重みや、告げられた方の喪失感、不安を考えると大変申し訳ないことです。さらに、あたかも不治の病のような言い方は、場合によっては、糖尿病をおもちの方へのスティグマ(負の烙印らくいん))や不利益、社会的差別の助長にもつながりかねません。
 
このような反省がある中で、近年、肥満を改善させる薬や肥満外科手術などが進歩したこともあり、2型糖尿病が発症前の状態に戻った、すなわち「治った」ように見える現象が、世界的に注目されています。最近、欧米の専門家委員会によって、この現象に「寛解(かんかい、remission:レミッション)」という正式名称が付けられ、世界共通の定義(診断基準)として、 「薬なしでヘモグロビンA1c 6・5%未満が3ヵ月以上維持されていること」と決まりました。
 
ここで、一般的に病気が治ったことを意味する「治癒」ではなく、「寛解」という言葉が選ばれた理由は、前者が感染症のようにいったん完治すると再発しない疾患に使われる用語であるのに対し、後者は膠原(こうげん)病や治療後の悪性腫瘍のように、いったんよくなっても再び悪化する可能性がある疾患に使われる用語で、2型糖尿病は血糖値の再上昇の可能性があり、後者に近いからです。
 
ただし、いったん「寛解」した方の血糖値が再上昇して糖尿病に戻ってしまったとしても、その「寛解」の経験は決して無意味ではありません。食事・運動療法などにより薬が不要になったという貴重な体験が、その後の治療に役立ちますし、糖尿病の進行を遅らせることにもつながるからです。』
 
日本糖尿病協会月刊誌「さかえ」より引用
 
 
 
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