あなたの血圧、正しく測れていますか?【2025年6月号】
診察の中で、「おうちで血圧を測ってみてくださいね」とお伝えすると、
「自己流で測っていますけど、これで合っているのか不安です」
「いつ測ればいいんだろ?」
「毎日値がバラバラで、私の血圧計、壊れているのかな?」
…といったご質問をよくいただきます。
血圧は、ご自身で確認できるとても大切な健康のバロメーター。でも、測り方を少し間違えるだけで、結果が大きく変わってしまうこともあるんです。
今回は、「正しい血圧の測り方」について、お伝えできればと思います。
なぜ血圧を測ることが大切なの?
高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がほとんどありません。でも、知らないうちに血管に負担がかかり、動脈硬化が進んでしまうことがあります。世界保健機関(WHO)の報告では「最も病気のリスクに影響を与える要因」とされています。
特に糖尿病や腎臓病などがある方は、血圧が少し高いだけでもリスクが大きくなります。だからこそ、「今の血圧をきちんと知ること」がとても大切です。
おうち血圧を正しく測るための3つのポイント!
①朝と夜、1日2回測りましょう
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朝:起床して排尿後、朝食を食べる前
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夜:夕食や入浴の前(お風呂の後や運動の直後は避けましょう)
血圧は1日の中で変動します。特に「朝起きてすぐ」の血圧は、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクに直結すると言われています。できる範囲で構いませんので、1日2回、同じ条件で測ることを意識してみてください。
<1日2回も測れないよ〜という方へ>
生活スタイルの関係で1日2回も測るのが難しい場合は、朝のみでもかまいません。夜勤があったり生活が不規則で朝測れない方は、ご自身の一番測りやすいタイミングで構いませんので、できるだけ落ち着いている時間帯に測ってみましょう。
② 測る姿勢にもコツがあります
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背もたれのある椅子に座り、両足をしっかり床につけます(足は組まないように)
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肘をまっすぐにして、腕は心臓の高さに
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1〜2分、ゆっくり呼吸してリラックスしてから測定しましょう
この「少しの落ち着く時間」が、正確な数値につながります。欧米のガイドラインでは血圧を測る前に背もたれのある椅子に5分くらいゆっくり深呼吸して座って、リラックスしてから測るのが正しいとされています。日本では最低1~2分くらいはリラックスしてから測るということが推奨されています。
③ 血圧計は「上腕式」がおすすめ
ご家庭用の血圧計はたくさんありますが、手首式よりも、上腕で測るタイプの方が正確です。最近のモデルは簡単に使えるものが多く、測定データをアプリで管理できるタイプもあります。
→こちらのブログ「一家に一台はあたりまえ!?血圧計の選び方」で詳しく紹介しています
こんな測り方は血圧が高くなります
ちょっとしたことがきっかけで、血圧は簡単に上がってしまいます。血圧測定時によくあるミスと、それによってどれくらい血圧が上がってしまうのかをご紹介します。
※なお、ここでご紹介する数値はあくまでも目安であり、すべての方に当てはまるわけではありません。体調やそのときの環境によっても変動しますので、ご参考程度にご覧ください。
① 測定前に座っていない(安静なし)
血圧+5~10mmHg
活動後、すぐに血圧を測ると、直後の緊張や興奮で高く出やすくなります。最低でも1分、できれば2分ほど座ってから測りましょう。活動が激しかったときは少し長めに休憩をとりましょう。
クリニック内で測るときは、次の人への配慮や緊張でドキドキするため、上がりやすくなります。ご自宅での安静時の血圧はとても大切です。
② おしっこを我慢している
血圧+約10mmHg
おしっこを我慢し、尿でパンパンの膀胱から排尿すると、血圧は10mmHg程度下がるといわれています。クリニックで尿検査があるときは、先に尿を出してから血圧を測ることで、より正確に測定できます。
③ 厚手の服の上から測っている
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薄手(2mm程度)→ 影響ほぼなし
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やや厚手(4mm) → 血圧+約3mmHg
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厚手(7mm) → 血圧+約5mmHg
自宅内では、腕まわりが薄手の服で測るようにしましょう。また、きつく袖をまくって腕を圧迫すると、それだけでも血圧が上がるので注意です。診察室内で測る場合は、できれば簡単に薄着になれる服でご来院いただけるとよいと思います。
④ 腕の位置が低い
カフが心臓より5cm低い → +3〜4mmHg
カフ(腕帯)は心臓の高さに合わせましょう。テーブルの上に腕を置いて、肘をまっすぐにして測るのが理想です。
⑤ 椅子の背にもたれず、前かがみになっている
血圧+6〜10mmHg
実はこの姿勢、かなり多くの方がやってしまっています。背もたれにしっかりもたれて、リラックスした姿勢で測ることで、正確な血圧が測れます。前かがみの姿勢は避けましょう。クリニック内の自動血圧計も椅子の位置によっては前かがみの姿勢になってしまいます。血圧計の前ではなく、横に椅子を配置すると前かがみにはなりません。
⑥ 足を組んでいる・足が浮いている
血圧+2〜8mmHg
足を組む、あるいは椅子が高すぎて足が浮いてしまうと、それだけで血圧が上がります。両足をしっかり床につけるようにして座りましょう。
⑦ 測っている間におしゃべりしている
血圧+5〜10mmHg
ついリラックスして会話してしまいがちですが、測定中は静かに、口を閉じて測りましょう。話していると、交感神経が刺激され、血圧が高めに出てしまいます。
血圧を正しく測ることは、自分の体を知ること
血圧は「ただ測る」だけでなく、「どう測るか」がとても大切です。
当院でも、できるだけ正確に測っていただけるよう、椅子の配置や測定の説明には気をつけています。わからないことがあれば、スタッフに遠慮なくおたずねください。ぜひ、明日からの自宅での血圧測定に役立ててくださいね。